
国内の冷凍うどん市場で長年の実績を持つ同社は、年間365食以上のうどんを味わう「うどん博士」、商品開発部チームリーダーの山田顕さんを中心に、現地の味に近づくための商品開発を重ねています。内食機会が増えるいっぽうで食卓にマンネリが漂う今だからこそ、手軽に地域色豊かな一杯を家庭で楽しんでもらいたい——そんな思いが、開発現場の静かな原動力になっているようです。
旅の目的地は「ご当地グルメ」へ
2024年の観光庁「令和7年版観光白書」によれば、旅の目的に「現地のグルメ」(51.1%)を挙げる人が最も多く、「温泉」(45.1%)を上回りました。物価高を背景に節約を意識しながらも、プチ贅沢として"ご当地の味"を楽しみたいというニーズが確実に高まっています。さらに円安の影響を受けつつも、国内旅行需要は回復傾向にあるといいます。
外食では福岡うどんなりの地域密着チェーンが全国に展開し、"ご当地うどん"市場はかつてない盛り上がりを見せています。冷凍食品市場も2024年に1兆円を突破し、国内生産金額は8000億円を超えて過去最高を更新。タイパ志向の高まりと冷凍技術の進歩があいまって、冷凍食品は私たちの日常により深く、けれど確かな居場所を築いています。
SNSで「ご当地うどん巡り」が話題になるのも、土地ごとの個性が麺のかたちに如実に表れているからでしょう。秋田の稲庭うどん、栃木の耳うどん、山梨のほうとう、上州のひもかわうどん、愛知の味噌煮込みうどん、香川の讃岐うどん、福岡の肉ごぼう天うどん——同じ「うどん」と呼びながらも、気候や風土、歴史が麺の太さ、食感、つゆの色合いに静かに息づいています。ふと立ち止まって思い出すのは、あの旅先で啜った一碗の余韻だったりしますよね。温泉宿の朝餉に並ぶ一碗も、ふと蘇ってくるはずです。
麺と出汁に宿す、土地の知恵
テーブルマークは消費者の「食べてみたい」を起点にご当地うどんを調査し、すでに稲庭うどんとほうとうを家庭で楽しめる定番として展開。そして2025年秋冬の新たなラインナップとして、「福岡うどん」と「ひもかわうどん」が加わりました。いずれも麺そのものに大きな特徴がある土地の味です。
博多うどんは、柔らかい麺と上品な出汁が身上。サクサクに揚がったごぼう天と、甘辛い牛肉を載せた「肉ごぼう天うどん」は、現地で誰もが知る代表的な一杯です。テーブルマークは、その"ふわっと感"をいかに冷凍麺で再現するかを課題に据え、麺の硬さと粘りのバランスを徹底的に研究。原料と工程の工夫によって、独自の柔らかさにたどり着いたといいます。仕上げには、スティック状のごぼう天が3本添えられ、ほのかに甘さを感じる出汁の組み合わせが、現地の一杯の記憶をやわらかく呼び起こしてくれます。
新しい「ひもかわうどん」は、群馬の郷土料理に着想を得た平打ち麺です。本場では幅1.5センチから10センチ超まで実にさまざまな幅があるといわれます。もちもちした平打ち麺は幅広でしっかりした食感が特徴ですが、薄さを追求すると麺が切れやすくなるという難しさがあったそう。試作を重ね、約4センチの幅広麺でありながらも「つるん」とした新しい食感を叶えました。魚介出汁のつゆに、豚肉やかまぼこ、ほうれん草、にんじんを彩りよく組み合わせ、見た目にも心に残る一杯に仕上げています。
食卓の上に、小さな旅の余韻を
「いつかあの土地まで歩いてみたい」——そう思って手に取る一杯も、「帰ってきてから、もう一度あの味を」と思い出す一杯も、冷蔵庫のなかのご当地うどんは、旅の記憶をそっと呼び戻してくれる存在になってくれそうです。
開発を担当する山田顕さんは、年間365食以上のうどんを味わう"うどん博士"。麺とスープの特徴をどこまでも追求し、現地の味により近づけようとする同社の姿勢は、単なる時短の便利食ではなく、一杯の向こうに広がる土地の物語を伝えようとする心意気のように感じられます。
冷凍うどん国内シェアNo.1という実績を持つテーブルマークが挑むのは、家庭の食卓を、もうひとつの旅の始発駅にすることなのかもしれません。今夜は湯けむりのように温かい出汁の香りに包まれながら、土地の記憶をゆっくりとほどいてみてはいかがでしょうか。湯上がり後にそっと啜る一碗が、きっと明日への静かな活力になってくれるはずです。
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