
旅のあいだの一冊という、たのしみ方
長い移動の車窓や、お宿の静かな夜のひとときに、地元ゆかりの本を一冊ぱらと開く——そんな旅の時間を好む方が、少しずつ増えてきているように感じます。土地の歴史や言い伝え、ものづくり、食文化の背景を、頁からすうっと吸い上げたあとに、もう一度外を歩いてみる。同じはずの路地や街角が、ほんのすこしだけ違って見えてくるから不思議ですよね。小さな本屋さんで手に取った手仕事の書籍が、翌日訪れる市場の活気を思い出させてくれることもある。こういう体験を少しずつ重ねていくうちに、その土地の解像度が静かに上がっていく気がします。ブックカバーは、書店の棚の前で「今日はどれを手にしようかな」と迷う時間に、文字どおり表紙を彩ってくれる存在です。ふと目を留めた地名や図案が、そのまま「あっちの道も歩いてみたいな」という、ささやかな招待状になってくれるかもしれません。旅の中で、あえて「読む時間」をひとつ作ってみる——そんな余白のとりかたを、後押ししてくれる道具でもあります。
37の書店という、手を伸ばせば届く距離
配布の対象となるのは、北海道内の37の書店。札幌を中心に、道東、道北、道南、あるいは小さな街角の個人書店まで、網がゆるやかに広げられていることをうかがわせます。北海道は文字どおりに広い土地柄ですから、点在する書店を一度に巡るのはなかなか大変。だからこそ、こうしたブックカバーという「入口」が街ごとにそっと置かれるのは、足取りをやわらかく整えてくれるように感じます。ご当地グルメを扱う店と並んで書店の灯がともっている街角は、ゆっくり旅のペースを守りたい方のなかに、じんわりと残る風景になりやすいのではないでしょうか。ひとつの街でブックカバーを手にしたら、次の街でもう一冊、それからまた別の街で——そんなふうに、37という数を経由点にして、道内の旅がゆるやかに連なっていく。書店どうしの横のつながり、街あるきの足元のこまやかさを思うと、37軒という数字のなかに、静かな奥行きが広がっているのを感じるはずです。
持ち帰りたくなる、紙ものとしての楽しみ
旅先で持ち帰ったブックカバーは、紙もの好きな方のあいだではちょっとした宝物ですよね。使い終わったあとも、絵葉書や栞のように、なんとなく手元に残しておきたくなるもの。表と裏の両面に並ぶ図案や手書きのメモを重ねていくうちに、ブックカバーはそれ自体が一冊の小さな旅の記録になっていきます。道内の市場で見かけた食材の写真や、その夜にいただいたご当地グルメの余韻を、さりげなくブックカバーの余白に書き留めていく——そんな使い方も、きっと楽しいはずです。配布の開始は31日から。北海道へのご出発前のご予定に、あるいはすでにお宿に向かわれている方の行程のなかに、ご自宅の近くや宿泊先からほど近い本屋さんを一軒、そっと加えてみてはいかがでしょうか。表紙を一枚めくる小さな動作が、次の目的地への、名もない一歩につながるのかもしれません。ふと手に取った一冊が、思いがけないご当地グルメとの出会いを連れてきてくれる——そんなささやかな化学反応が、ブックカバーを介して、ゆっくりと広がりそうです。
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