
大地と寒暖差がくれた、栃木の滋味
那須連山の麓、標高1000メートル前後で育つ高原野菜は、まさに「歩いて確かめたくなる」味覚です。日中の陽ざしと夜のひんやりとした空気のリズムが、栄養をたっぷり吸い上げた土壌と一緒になって、甘みと旨味をぎゅっと閉じ込めてくれます。那須町にある「Restaurant cu-eri」では、季節によって12〜15種類もの地場野菜が並ぶ、ディナー限定の季節野菜バーニャカウダが味わえ、ふわりと広がる香りに旅の緊張がほどけていくよう。朝8時から開く「Cafe facile」では、イオン水でじっくり発酵させたパン生地のベーカリーがあり、英国調の建物の中で高原の朝の光を感じながらいただけるのも、歩く旅人へのうれしい朝ですね。
手で紡がれてきた、誇りある一碗と一品
日光連山からの伏流水と寒暖差の激しい気候が育てたそばの実。日光エリアには「ひきたて、打ちたて、ゆでたて」の三たてにこだわる名店が並び、「cafe 茶まびこ」では店内の石臼で挽いたそば粉をガレットやそばソフトクリーム、フォンダンそばショコラなどにアレンジした一品も楽しめます。「むつみ庵」の粗挽きと挽きぐるみをブレンドした田舎そばは、濃厚な鶏ダシ醤油のつけ汁との相性がぴったりで、そばそのものの風味が口いっぱいに広がります。日光山で修験者が食べてきた精進料理、湯波は厚みともちもちした食感が特徴で、「日光湯波巻 全-zen-」では魚介の白ダレがミルキーな甘みを引き立て、栃木県産の野菜を添えた小鉢も並びます。那須の指定農家が20カ月以上肥育したという黒毛和種ブランド牛「那須和牛」は、きめ細かな肉質と極上の霜降りが魅力で、「やま吉 那須本」のステーキ丼と那須ラーメンのセットや、地元精肉店直営のレストランでいただけるやわらかな食感は、歩き疲れた体にじんわり沁みていきます。
旅の最後に残る、とろりとした余韻
生乳の生産量が全国2位という栃木県には、新鮮な乳製品から生まれるチーズスイーツも豊富です。F.W.ホーン氏の別荘を利用した「西洋料理 明治の館」のチーズケーキ「ニルバーナ」をはじめ、「チーズガーデン THE NIKKO」では4種のチーズケーキプレートを併設カフェで味わえます。日光市には天然氷の氷室が3軒あり、2〜3週間かけて厳しい寒さで凍らせた氷は不純物が少なく硬く溶けにくいので、薄く削るとふわふわで口の中でさらりと消えるようです。「CAFÉ OWL」は四代目徳次郎の直営店で、毎年5〜10月頃には自家製シロップのかき氷を、緑に囲まれたテラス席でいただけます。那須の正式名称「那須の内弁当」は、九尾の狐伝説になぞらえて9種類の那須産食材が八溝杉のプレートに並ぶ仕組みで、塩原温泉郷では50年以上愛され続ける「塩原温泉郷焼きそば」もまた、炒めたソース焼きそばに醤油味のスープを注いで味の変化を楽しむ一杯。源泉かけ流しの湯けむりのあとでいただく一杯は、歩いてきた道のりを全部まとめてくれるようです。
歩き旅は、足が覚えた道すじと、舌が覚えた土地の味が一緒に残っていくものです。栃木のグルメは、訪れて、歩いて、味わってこそ、その余韻まで持ち帰れるのかもしれません。次にどの一碗を選ぶかは、きっとあなた自身の足音が教えてくれるはずです。
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