
秩父のまちで生まれた一口サイズのコロッケ「ちちぶコロコロ」が、10年以上の時をへて、ゆっくりとあたたかな湯けむりのようによみがえります。PR TIMESの発表によれば、かつて秩父市商店連盟連合会とみやのかわ商店街振興組合が中心となって生み出したこのご当地グルメを、今度は「まちの共通メニュー」としてもう一度育て上げようという取り組みが始動しました。歩く旅人にとって、目的地でふと口にした一品が「あのまちの味」として長く胸に残る——そんな出会いは、とてもうれしいものですよね。秩父を歩く計画を立てている方にとっては、見逃せない小さな再会になりそうです。
20店舗の個性が集まった、2014年の「ちちぶコロコロ」
そもそも「ちちぶコロコロ」とは、どんなコロッケだったのでしょう。開発の記録をひもとくと、2012年度から調査が始まり、2014年度にはフードアドバイザーの助言も交えながら商品づくりが進められたといいます。ルールはいたってシンプルで、「秩父の食材を必ず1品以上使う」「一口大サイズの球状コロッケ」という二点だけ。そのゆるやかな枠の中で、各店舗がそれぞれの持ち味を生かしたオリジナルを自由に考案しました。同年11月には秩父市内の20店舗で同時に展開され、自家製豆腐やしゃくし菜漬け、ずりあげうどん、秩父太白芋など、その土地ならではの食材を包んだコロッケがずらりと顔を並べたのだそうです。翌2015年には「みやのかわナイトバザール」にも登場し、夜の商店街を歩く人びとのあいだで話題を呼んだものの、地域へのさらなる定着まではなかなか至らず、取り組みは次第に静まっていったといいます。立ち上がってから一度お休みをへて、10年以上の歳月。まちの記憶としては短くない沈黙でしたが、そのあいだもレシピや想いは手元に残っていたのでしょうか。
復活版は「しゃくし菜漬」を練りこんだ、業務用のまちのコロッケ
今回の復活で大切に受け継がれているのは、当時のコンセプトそのものです。しゃくし菜は葉のかたちが杓子(しゃくし)に似ていることからその名がついたとされる秩父の伝統野菜で、漬物として長年、地域で食べ継がれてきました。復活版では、このしゃくし菜漬の油炒めをコロッケの生地に練り込み、しゃくし菜ならではの食感と香りをそのまま閉じ込めているといいます。製造はヨシムラ・フード・ホールディングスグループの富強食品が手がけ、国分首都圏が販売を担う業務用商品。販売企画・プロモーションは、ニューホライズンコレクティブの「売れる仕組み創造室」が支援するという、食品と流通のプロたちが手をつないだ連携のかたちです。かつてのように一店舗ずつが工夫を競い合う形から、「どの店でも同じ味が楽しめるまちの共通メニュー」へ——そのかたちの移ろいに、今回の復活の新しい息吹を感じますね。舌でまちを覚える、歩く旅にとってこれ以上のご当地グルメのあり方はないのかもしれません。
9月26日、秩父駅前の「宮森マーケット」が最初の一口
お披露目の場は、まず9月16日に秩父地域の飲食店関係者と報道陣に向けて開かれ、試食を兼ねた導入の働きかけが行われる予定です。そして一般の方がはじめて手に取れるのが、9月26日の土曜日に秩父駅前で開催される「秩父駅前横丁 宮森マーケット」。その場で調理された「ちちぶコロコロ」が、来場者に向けて販売されます。揚げたてのコロッケから立ちのぼる湯気と、しゃくし菜のほのかな香り——まだ頭の中での想像だけですが、歩く旅の途中で出会えるとしたら、、きっと足を止めたくなりますよね。今後は導入が決まった飲食店から順次提供が広がっていく予定で、秩父を歩く日程がある方は、「どこで食べられるか」をチェックする楽しみがひとつ増えました。10年ぶりの復活が、まちのどんな景色と寄り添っていくのか。静かに、けれど確かに、歩き旅のお供に迎えてみたいですね。
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