
「おいしい」のその先にある、地域の体温
ご当地グルメはこれまで、地域の認知向上や集客、地域振興に大きな役割を果たしてきました。その歩みのさらに奥に、「地域課題解決」と「ウェルビーイング」という二つの視点を重ね合わせようとするのが「ご当地グルメ3.0」です。食を入口に、地域の歴史や文化、風土、生産者の手しごとの背景までを一皿に添え、食べる人と土地とのあいだに新しい関係性をつくろうという考え方ですよね。
当日のセミナーでは、青木氏が「ご当地グルメ3.0で地域の未来を考える——『おいしい』の、その先へ——食を通じた地域課題の解決と、新しいフードツーリズム」をテーマに登壇。フードツーリズムや「イミ消費」の広がりを踏まえながら、全国各地のご当地グルメ3.0の事例が紹介されました。
青木氏は「ご当地グルメ3.0は、『おいしい』で終わるのではなく、食を入口に地域の課題や背景を知り、地域との新しい関係をつくっていく考え方です。地域課題を『食べる価値』に変え、消費者にも地域にもプラスになる仕組みを考えていきたい」と語っています。
そして、日本ホテル株式会社顧問でエグゼクティブアドバイザーの松田秀明氏から、「食品ロス削減に関する日本ホテルの取り組みについて」と題した実務事例が共有されました。ホテル厨房から立ち上がる知恵が、机上の議論ではなく、現場の温度をともなって流れ込んでくる——その重みは、ラボのこれからを語るうえで欠かせない輪郭ですよね。
「るるぶキッチン」が、机の上ではなく食卓になる
ラボの肝は、机上の議論で終わらせない点にあります。今後、JTBパブリッシングと青木氏は「るるぶキッチン」を実証フィールドとして連携し、地域食材や地域課題をテーマとしたメニューの提供、店頭での情報発信、消費者アンケートを実施していく計画です。実証を通じて、メニュー選択や地域への関心、訪問意向、応援意向がどのように変化するのかを測り、その結果を新たな商品開発やプロモーション、フードツーリズムへとつなげていく方針とされています。
セミナーでは、地域の魅力と課題を整理し、食を通じて地域課題を解決しながら新たな観光需要と地域経済を生み出す仕組みを目指したいとの考えが示されました。「るるぶ」が長年培ってきた編集力を生かし、旅行者が「行ってみたい」「食べてみたい」と感じる物語へと情報を編集し、冊子のみならずデジタルも活用して送客へとつなげる構想が語られています。
「『食でつながる、人でつながる、情報でつながる、そして、地域がもっと輝いていく。その仕組みを、ぜひ皆様と一緒につくっていきたい』」——その締めくくりの言葉は、ラボの温度を静かに教えてくれます。「食べて終わり」ではなく、地域の物語とともに届ける一皿を、この新宿の小さなキッチンから探ろうとしているわけです。
歩いて旅する私たちが見守りたい、その先の一皿
「ご当地グルメ3.0ラボ」の対象は自治体、DMO、観光協会、地域事業者。定員は20名(1団体3名まで)、参加費は1,000円で試食・意見交換費用が含まれます。会場は新宿駅から徒歩3分、新宿三丁目駅から徒歩1分の「るるぶキッチン」。足を運びやすい距離に実証の食卓が用意されているのは、嬉しい限りですね。
私たちのサイトでは、これまで数えきれないほどのご当地グルメを取り上げてきました。どの街の一碟にも、土地の人が積み上げてきた時間と、その時々の課題が静かに息づいています。湯上がり後のほっとした胃袋に、土地の記憶がじんわり広がるような——そんな一碟を、どれほど旅先で出会えたでしょうか。「おいしい」を入口に、その土地の物語までを一箸ごとに運んでくれるか。食品ロスや未利用魚といった課題が、メニューの中でどんな表情をまとって届くのか。ラボの検証が実際のメニューや旅の選択にどう届くのか、歩きながら見守っていきたい取材対象です。
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